Maki's Blog ほぼ隔日

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野村正樹さん講演会−作家に文章を学ぶ

 2008.06.30 Mon

割り込みイベントのため、月曜定例のテーマ、学習:本多勝一「日本語の作文技術」の予定を変更する。といっても文章の書き方についてプロの小説家の講演をレポートするので、流れはそのままだ。

先週の25日(水)に作家の野村正樹さんの講演会と2次会に参加した。なお、野村正樹さんのこの講演シリーズは安価(3000円)で参加自由なので、ご興味のある方はこちらからどうぞ。次回は9月25日でテーマは未定だ。

演目は「他人に伝わる文章の書き方〜自分を文章で表現する方法〜」、まさにタイムリー、実はこの企画を待っていたのだ。

レポートの前に野村正樹さんを紹介する。


講師紹介:野村正樹氏プロフィール

1944年神戸市生まれ。67年慶應義塾大経済学部卒。サントリーに入社。

以後28年間にわたり営業・宣伝・マーケティング・流通開発などを担当。宣伝部には15年間在籍し、トロピカルカクテル、ブランデーアメリカン、缶ビーなどのキャンペーンプロディユーサーも歴任。

79年:創業80周年記念論文で優勝し流行語「シティ・ウォッチング」を生む。
86年サントリーミステリー大賞応募作「殺意のバカンス」で推理作家デビュー。
91年「シンデレラの朝」で日本文芸大賞現代文学賞を受賞。

94年創業90周年記念事業のサントリーミュージアム「天保山」を開館して、広報部長に就任。95年50歳を機に早期選択定年制度で退社・独立してNMLオフィスを設立。以後、著作・講演活動に専念して現在に至る。

著書多数。日本ペンクラブ、日本文芸家協会、日本推理作家協会などに所属。


というプロフィールからすると、見た目も生き方もかなりスマートな方を想像するかもしれない。実は私もそうだった。慶応経済サントリー宣伝部から広報部長となれば、島耕作みたいな人物像を思い浮かべる。しかし実物はかなり違った。

こんなかんじだ。もしかして失礼な書き方をしているか、私は。

作家の野村正樹さん

お人柄は、苦労人・左利き・女性が苦手(本人談)・鉄。これでだいたいご想像がつくと思う。無理か。まぁいいや。とにかく気さくで親切でやさしい方だ。

これが講演のレジュメで、こういうものを用意していただけるとあとで講演メモを整理する際にとても助かる。

実は去る4月、違う演目で同氏の講演を聴いていた。それでお人柄や趣味趣向などは存じ上げている。お陰で間違った先入観なしに素直に話を聞くことができた。

プロの作家は文章をどう考えているのか。学習テーマの核心に迫る。

まず最初に参加者全員−12名くらいだった−ひとりひとりが質問する。それからレジュメの順に話を進め質問に該当する話題に及ぶとその回答をするという進行だ。とても効率的な進め方だと思った。

テーマが文章だけに参加者はとても具体的な質問をする。ちなみに私の質問は「体言止めを避けるにはどう書けばよいか」、とてもピンポイントな質問を投げた。

話が始まる。要点をまとめたのでレジュメとともにお読みいただきたい。なお下記の番号はレジュメの番号と関連はない。

1.文章は本来むずかしい。修練が必要なのに練習しないで書くからおかしくなる。

 1)PCメールは文章が長めになる。だらだら書くから。
 2)携帯メールは文章が短めになる。画面が小さいし。

2.文章は見た目が9割。

 1)1行40文字として、ふつう改行は3〜5行に1回行なう。
 2)漢字比率は30%台がよい。漢字←→ひらがなで意図的に比率を調整することもある。
  例)できる←→出来る、然るに←→しかるに、などで。
 3)カタカナ/数字/アルファベットは使いすぎない。バランスを大切に。
 4)不要なカタカナ英語は使わない。日本語に置き換える。

 5)約モノ、つまり「」{}などはなるべく使わない。これを約バライという。
 6)敢えて改行しないで読ませる文章をダラダラ書くという高等テクニックもある。
  例)宮部みゆき の見事な書き出しは言葉の選び方がうまい。五感を駆使している。
 7)体言止めは極力使わない。少なくとも連続しては使わない。リズムが悪くなるから。防止策は「〜だ」「〜だった」「〜である」を使い分ける。
 8)体言止めは出版社では校正の段階でチェックがかかり修正される。

3.名文は明文、つまりわかりやすい。

 1)書き出しは短文+改行で。
 2)刈り込み:余計な接続詞や接頭語などを削る。2割は削れる。
 3)書き込み:たたみかけるには敢えて書き足す。くどくど書く。
 4)文末は「雨だれ」(改行のあと1文字が次行に出る)しないよう調節する。

 5)実際に本にする場合は、原稿執筆後に印刷する文字数/行でプリントアウトして見た目をチェックする。他人に見てもらうとよい。
 6)泣かせる一文を付加するとよい。これは練習して習得する。
 7)たまには手書きしてみる。よく考える機会が得られる。

4.名文をよむ
 1)手近な名文に日経新聞の交遊抄がある。600字ものでベテラン編集者が2時間のインタビューをもとに原稿をおこす。ちなみに体言止めはないよ。
 2)現在の新聞のコラムに名文は少ない。50才代の編集者は名文が書けない。
 3)視線を変える。立ち位地を変える。異に接する。

5.工夫は努力だ。
 1)文章を書くキッカケはいろいろあるので自分でつかもう。
 2)400字を3000枚書くと1人前になる。その通り賞を取れた。

6.番外編(2次会の酒席で私が聞いた)
 1)いい文章を書くと思う作家は?
  →藤沢周平、山本周五郎、読みやすい文章を書く。司馬遼太郎もいいかな。


以上が講演をまとめたものだ。すべてメモったわけではないのでヌケもあるかもしれないが、ツボははずしていないと思う。

野村さんはプロの作家だから、対象にしている文章は書面として掲載されるものに限定される。ネットで扱う文章ではない。その点を押さえた上で読んでほしい。特にブロガーのみなさんへ。

講演のなかで私が注目した点はここだ。

1.言うまでもないが、本に書く文章は「非ですます」、これが大前提となる。
2.上記の体言止めの回答部分、2−7)と8)、4−1)を確認してほしい。やはり小説や論文や散文の場合、体言止めはご法度に近い。防止策は私が考えていた通りだった。プロが同じことを言ってくれたので安心した。

3.好ましい漢字比率は30%台という。漢字比率を意識しているとは思わなかった。文章の見た目の美しさからくるものらしい。編集者もこのあたりはきびしくチェックするという。

4.5感を使って文章を書く。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚だ。これを駆使すれば対象から文章をおこせる。仕事でよく言われる5W1Hみたいなものだ。これは参考になる。


前回まで記事にした新聞記者の本多勝一、今回の小説・旅行記・ビジネス本作家である野村正樹、ともに言っていることは基本的には同じだ。出版物に書く散文・小説の文章は、高等テクニックとして逆をいく場合があるにせよ、基本的にはこうだ。

1.非ですますを基調とする。
2.体言止めは極力使わない。少なくとも連続して使わない。
3.語尾は使い分ける。同じ語尾を連続して使わない。

4.わかりやすくよみやすく書く。
5.五感を使って書く。
6.上手くなるにはたくさん書く。名文を読む。

7.出だしの書き方、改行の頻度、漢字比率、など基本をまず守る。
8.余計な接続詞や接頭語などは刈り取る。

この基本をまず押える。その上でバリエーションを考える。媒体・記事内容/目的、対象となる読み手、などなどの諸条件に合わせて柔軟に対応していく。

もちろん同じブログ記事でも、商品レビュー記事のように読書の注意を惹きつけ写真や動画を見せながら一気に最後まで読ませるものと、記録ものや散文のように何度もじっくり読んでもらうものでは、文章のスタイルは違ってくる。内容により文章のスタイルは違って当然だ。

それでもまず基本を押さえ、その上でバリエーションとスタイルを考える。記事の目的にあわせてバリエーションとスタイルを応用し発展させる。これだろう、結論は。

やっぱり修練が必要なのだ。あとはよく考えて書くことだ。そう思った。

次回に続く。

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